2026.06.18
この記事のまとめ
- 借地権とは、土地を所有せずに、土地を借りて建物を所有するための権利です
- 借地権付き建物には価値がありますが、所有権の土地建物と同じように自由に売却・建替え・解体できるとは限りません
- 売却、建替え、大規模な改修、解体を行う際は、地主との関係や契約内容の確認が重要です
- 地代増額の依頼を受けた場合は、固定資産税・都市計画税、過去の地代、現在の地代などを整理して判断することが大切です
- 底地を取得して所有権化できれば、建替え・売却・再開発の自由度は大きく広がります
親から相続した建物が、実は「借地権付き建物」だった。
このようなケースでは、最初に多くの方が戸惑います。
土地は自分のものではない。けれど、建物は自分が所有している。では、この建物は売れるのか。建替えはできるのか。古くなったから解体してよいのか。地主にはどこまで相談すべきなのか。
借地権は、きちんと整理すれば価値のある権利です。一方で、所有権の土地建物と同じ感覚で判断すると、売却・建替え・解体・修繕の場面でトラブルになることがあります。
特に、「相続した建物が借地権付きだった」「借地権付きの建物は売れるのか・建て替えられるのか知りたい」「地主から地代の値上げを求められて困っている」という方にとって、借地権は早めに整理しておきたいテーマです。この記事では、借地権の基本と、相続・売却・建替え・地代増額・修繕時に注意すべきポイントを、不動産オーナーとしての実務視点も交えて解説します。
そもそも借地権とは?土地と建物の所有者が異なる権利
借地権とは、簡単にいうと、土地を借りて、その土地の上に建物を所有するための権利です。
土地そのものは地主が所有しています。一方で、建物は借地人が所有しています。つまり、借地権付き建物では、土地と建物の所有者が異なる状態になります。
たとえば、次のようなケースです。
- 土地は地主の所有である
- 建物は自分または親族の所有である
- 毎月または毎年、地代を地主に支払っている
- 建物の登記はあるが、土地の登記名義は自分ではない
このような場合、土地を完全に所有しているわけではありませんが、建物を所有し、土地を利用する権利があるため、借地権付き建物として一定の価値を持つことがあります。
ただし、借地権は「土地を使える権利」であって、「土地を自由に処分できる権利」ではありません。そのため、売却・建替え・解体などを考える際には、所有権の不動産とは違う注意点があります。
借地権付き建物は売れるのか
結論からいうと、借地権付き建物は売却できる可能性があります。
ただし、所有権の土地建物を売る場合とは異なり、借地権付き建物の売却では、地主の承諾や契約条件の確認が問題になることがあります。特に、土地の賃借権を前提とする借地権の場合、建物を第三者に売却すると、土地を借りる権利も実質的に移ることになります。そのため、地主の承諾、譲渡承諾料、名義変更料、契約内容の確認などが必要になるケースがあります。
ここで注意したいのは、「借地権には価値がある」ことと、「自由に売れる」ことは同じではないという点です。借地権割合が定められている地域では、相続税評価などの場面で借地権に一定の価値が見込まれることがあります。しかし、借地権割合はあくまで評価上の目安の一つであり、実際の売却価格や売却のしやすさをそのまま示すものではありません。
実際の売却では、借地契約の内容、地代の水準、地主との関係、建物の築年数や状態、建替えや増改築の可否、譲渡承諾料の有無、買主が融資を受けやすい権利関係かどうか、底地と借地権を一体で整理できる可能性があるか、といった要素によって判断が大きく変わります。
当社は、これまで借地権付き建物を複数買い取ってきました。たとえば、観光地に近い立地で、1階は店舗として営業し、2階から4階を住居として使っていた借地権付きのビルを取得した例があります。当社はこの建物を購入してリフォームを行い、全体を商業ビルへとコンバージョン(用途転換)して活用しました。借地権付きであっても、立地や建物の状態によっては、このように買い手がつき、再生できる場合があるということです。
そのため、借地権付き建物を売却する場合は、通常の一括査定だけで判断するのではなく、権利関係を整理したうえで、どのような出口が現実的かを確認することが重要です。
借地権付き建物を解体してよいのか
借地権付き建物で特に慎重に考えるべきなのが、建物の解体です。
古い建物を相続すると、「使わないなら壊した方がよいのではないか」と考える方もいます。しかし、借地権付き建物の場合、建物を解体することで、借地権の扱いや地主との関係に大きな影響が出ることがあります。
借地権は、建物を所有する目的で土地を借りる権利です。そのため、建物がなくなった後に借地権がどう扱われるのか、再築できるのか、契約上どのように定められているのかを確認せずに解体を進めるのは危険です。特に、建物が老朽化している、再建築や建替えを考えている、地主から明渡しを求められている、相続人の間で意見が分かれている、売却前に更地にした方がよいと言われている、といった場合は注意が必要です。
借地権付き建物では、「古いから壊す」という単純な判断ではなく、解体後に借地権の価値や出口がどう変わるかを確認する必要があります。建物を壊したことで選択肢が狭くなることもあります。反対に、建物を残したままでは売却や活用が進めにくいこともあります。重要なのは、解体する前に、売却・保有・建替え・返還などの選択肢を比較することです。
建替え・増改築・修繕には地主の承諾が必要なのか
借地権付き建物では、建替えや増改築を行う際に、地主の承諾が必要になることがあります。特に、建物の構造を大きく変える工事、床面積が増える工事、建替えに近い工事、契約上「増改築には承諾が必要」と定められている場合などは、事前確認が欠かせません。
一方で、すべての修繕について必ず地主の承諾や承諾料が必要になるとは限りません。建物の維持管理のための通常修繕や、柱・梁などの構造体に大きく手を加えない工事、床面積が増えない工事であれば、工事内容や契約条件によって判断が分かれます。
当社でも、借地権上の建物について壁面修繕を検討した際、地主側から「大規模改修にあたるため承諾料が必要ではないか」と指摘を受けたことがあります。このような場面では、まず契約書、工事内容、過去のやり取りを確認し、本当に承諾が必要な工事なのかを整理することが重要です。
ただし、仮に承諾が不要と考えられる工事であっても、地主との関係を無視して一方的に進めると、後々のトラブルにつながることがあります。借地権は、権利の問題であると同時に、地主との継続的な関係の問題でもあります。日頃から連絡を取りやすい関係をつくっておき、何か工事を行う際には、事前に相談できる状態にしておくことが大切です。
「法律上できるか」だけでなく、「長期的に円滑な関係を維持できるか」まで含めて考える必要があります。なお、築古建物の修繕・空室・保有継続か売却かといった管理・活用面の悩みについては、管理改善・出口相談もあわせてご確認ください。
地代の増額を求められたときの考え方
借地権付き建物を所有していると、地主から地代の増額を求められることがあります。地代の増額依頼を受けたときに重要なのは、感情的に拒否することでも、言われた金額をそのまま受け入れることでもありません。まずは、数字を整理することです。
当社でも、借地の地代増額の依頼を受けることがあります。ある物件では、毎年のように地代増額の依頼が来ていました。その際、当社では、取得当初の固定資産税・都市計画税、現在の固定資産税・都市計画税、取得時の地代、現在の地代、増額依頼の内容などを整理し、地主側と打合せを行いました。そのうえで、すべての増額に応じるのではなく、客観的に見て妥当と思われる範囲の値上げ分のみ応じる形で整理しました。
地代の増額には、地主側の事情もあります。一方で、借地人側にも、長年の契約経緯や建物維持の負担があります。そのため、地代増額の話が出た場合は、現在の地代、過去の地代推移、固定資産税・都市計画税の推移、周辺の地代や賃料水準、借地契約の内容、建物の維持管理費や修繕負担、これまでの地主との合意経緯、といった資料を整理してから話し合うことが望ましいです。
数字を整理せずに話し合うと、「高い」「安い」という感覚論になりがちです。借地権付き建物を守るうえでは、地代についても、客観的な材料をもとに整理することが重要です。また、地代の話し合いは一度で終わるとは限りません。今後も長く関係が続く前提で、資料を残し、合意した内容を記録しておくことも大切です。
所有権の土地と借地権の土地が混在しているケース
借地権の問題は、単に「土地を借りているかどうか」だけでは終わらないことがあります。たとえば、所有権の土地と借地権の土地の両方にまたがって、一棟の建物が建っているケースです。
このような場合、一見すると一体の不動産に見えます。しかし、実際には、土地の一部は所有権、別の一部は借地権という状態です。そのため、売却・建替え・解体・活用のいずれを考える場合でも、権利関係の整理が必要になります。
当社でも、所有権の土地と借地権の土地にまたがって建物が建っていた案件を扱ったことがあります。その案件では、敷地形状や許可料、権利のまたがり方などの関係から、建物と土地を一体で売却することが難しい状況でした。そこで、全体を一括で動かすのではなく、まず所有権部分を切り離して売却し、残った借地権上の建物についてはリフォームを行い、店舗リーシングができる状態に整えました。
このように、借地権が絡む不動産では、「売るか、残すか」だけでなく、複数の出口を比較する必要があります。借地権付き建物は、権利関係を整理することで選択肢が広がることがあります。一方で、整理しないまま動くと、売却先が限られたり、地主との協議が難航したり、活用できるはずの建物を活かせなくなったりすることもあります。
借地権を所有権化して、活用の幅を広げた事例
借地権付き建物は、底地(土地)の所有者である地主と権利が分かれているため、そのままでは建替えや再開発の自由度が低いのが難点です。しかし、底地を取得して所有権化できれば、活用の幅は大きく広がります。
当社が保有していた、駅から徒歩圏の古い事業用建物の例です。立地には一定の需要が見込めましたが、土地は地主から借りている借地でした。建物は築年数が経過し、設備更新や大規模修繕が必要な時期で、借地権付きのままでは建替えや第三者への売却、再開発の検討がしにくい状態でした。さらに周辺は、細かく分かれた土地や古い建物が複数あり、単独の土地では十分な活用が難しいエリアでした。
そこで当社は、単に借地権付き建物を売却するのではなく、まず底地と借地権を整理して所有権化し、周辺地と一体で活用する方向を検討しました。地主に対しては、底地だけでは流動性が低いこと、借地関係を整理すれば土地全体の活用可能性が高まることを説明し、当社が底地を取得して、借地権と底地を一体化する形で権利関係を整理しました。
所有権化したうえで、隣接地・周辺地の所有者とも協議を進め、接道・敷地形状・建物配置・既存建物の解体時期・各所有者の意向を整理しながら、開発事業者や設計者とも協議を重ねました。最終的には、当社保有地を含む周辺土地を一体として再編し、従前よりも活用しやすい敷地として再開発につなげることができました。
借地権付きのままでは動かしにくかった不動産を、底地取得によって所有権化し、さらに周辺地と組み合わせることで、単独では実現しにくかった再開発を実現した事例です。なお、建替え・再開発にあたっては建築費の動向も大きく影響するため、あわせて検討が必要です(参考:不動産価格高騰の本当の要因|建築費高騰と賃料の限界)。
借地権付き建物でとり得る出口の選択肢【一覧】
借地権付き建物は、「売る」「残す」の二択ではありません。主な選択肢を整理すると、次のようになります。
| 選択肢 | 概要 | 確認すべきポイント |
|---|---|---|
| 借地権付き建物として売却する | 借地権付きのまま第三者へ売る | 地主の承諾・譲渡承諾料、買主の融資のしやすさ |
| 地主に借地権を買い取ってもらう | 借地権を地主へ売る | 地主の意向と価格条件 |
| 底地と借地権を一体で売却する | 地主と協調し、土地建物を一体で第三者へ | 地主との合意、配分の取り決め。流動性・価格は上がりやすい |
| 底地を取得して所有権化する | 借地人側が底地を買い取る | 地主の合意・資金。建替え・売却・再開発の自由度が上がる |
| リフォームして賃貸活用する | 建物を改修して貸す | 修繕費、増改築への承諾の要否、収支 |
| 建て替える | 地主の承諾を得て建て替える | 承諾・契約条件、建築費、事業収支 |
| 借地権を返還する | 建物を解体して土地を返す | 解体費・原状回復、返還条件、立退料の有無 |
どれが現実的かは、契約内容・地主との関係・建物の状態・立地・資金によって変わります。整理しないまま動くより、選択肢を並べて比較することが、結果的に借地権の価値を活かすことにつながります。
借地権付き建物を相続したら、まず確認すべきこと
借地権付き建物を相続した場合、最初に確認すべきことは、売却価格だけではありません。まずは、次の項目を整理することが重要です。
- 土地の所有者は誰か
- 借地契約書が残っているか
- 契約期間や更新の内容はどうなっているか
- 地代はいくらか、滞納はないか
- 建物の登記はどうなっているか
- 建物の老朽化や修繕状況はどうか
- 建替えや増改築に関する契約条項はあるか
- 地主との関係は良好か
- 相続人の間で意見は一致しているか
- 売却・保有・活用・返還のどの選択肢が現実的か
特に、相続人が複数いる場合は、「誰が建物を使うのか」「誰が地代を払うのか」「修繕費を誰が負担するのか」「将来売るのか」といった問題が後から出てきます。借地権付き建物に共有が重なると、話し合いはさらに複雑になりやすいため、早めの整理が重要です(参考:相続した実家の共有持分トラブル)。
借地権は、放置しても自然に整理されるものではありません。建物が古くなるほど、修繕費や解体、地主との協議、相続人間の意思決定が難しくなることがあります。相続した段階で、借地契約、建物状態、地主との関係、今後の利用方針を一度整理しておくことが重要です。なお、借地権に限らず相続した不動産全般の進め方については、相続した不動産の相談もあわせてご確認ください。
借地権・底地に関するよくある質問
Q借地権付き建物は売れますか?
売れる可能性があります。立地や建物の状態によっては買い手がつき、当社のように購入して活用する事業者もいます。ただし、地主の承諾や譲渡承諾料、契約条件の確認が必要になることがあります。
Q借地権付きの古い建物は、解体してしまってよいですか?
解体前の確認が重要です。建物がなくなると、借地権の扱いや地主との関係に影響することがあります。再築できるか、契約上どう定められているかを確認せずに解体するのは避けるべきです。
Q地主からの地代増額には、必ず応じないといけませんか?
言われた通りに応じる必要はありません。固定資産税・都市計画税の推移や過去の地代、周辺水準などを整理し、妥当な範囲かを検討したうえで話し合うことが大切です。
Q建替えや増改築に、地主の承諾は必要ですか?
必要になることがあります。構造を大きく変える工事や床面積が増える工事、契約で承諾が必要と定められている場合は、事前確認が欠かせません。通常の修繕は、工事内容と契約しだいで判断が分かれます。
Q底地(土地)を買い取って所有権にできますか?
地主の合意があれば可能な場合があります。底地と借地権を一体化すると、建替えや売却、再開発の自由度が大きく上がります。地主にとっても、底地単独より流動性が高まる利点があります。
Q借地権付き建物を相続したら、まず何を確認すべきですか?
売却価格より先に、契約と権利関係の確認です。土地の所有者、借地契約書の有無、契約期間・更新、地代、建物登記、建替え条項、地主との関係、相続人間の意向などを整理しておくことが重要です。
借地権は、価値と制約をセットで考える
借地権付き建物は、単なる「土地を借りている建物」ではありません。建物を所有し、その土地を利用できる権利がある以上、借地権には価値があります。一方で、所有権の土地建物と同じように、自由に売却・建替え・解体できるとは限りません。
大切なのは、借地権を「価値があるか、ないか」だけで見るのではなく、どのような制約があり、どのような出口が現実的かを整理することです。売却するなら誰にどう売るか、建替えやリフォームをするなら地主承諾や契約上の問題はないか、地代増額にどう対応するか、地主との関係をどう維持するか、相続人間でどう意思決定するか、底地と借地権を一体で整理する可能性はあるか——借地権は、一般的な不動産売却よりも検討すべき要素が多い分、早い段階で状況を整理することが重要です。
借地権付き建物・底地・共有名義など、権利関係が複雑な不動産でお悩みの方へ
オリンピア興業では、自社でも借地権付き建物を所有・運営し、底地の取得による所有権化や、周辺地と一体での再開発まで手がけてきた不動産オーナーとしての経験をもとに、借地権付き建物の売却・保有・活用・修繕・地代増額対応・所有権化などについて、状況整理からご相談を承っています。
「売れるのか知りたい」「地主との関係を悪化させずに整理したい」「建替え・解体・リフォームの前に確認したい」「底地を買い取って所有権化できないか」という段階でもご相談ください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。借地契約の内容、地主との合意状況、建物の状態、相続関係により判断は異なります。法律判断や紛争対応が必要な場合は、弁護士等の専門家と連携しながら確認することをおすすめします。記事内の事例は、個人や物件が特定されないよう内容を一部変更・抽象化しています。